スタッキングチェアシリーズ

・スタッキングチェア(1998)
この椅子のデザインは、日本の狭い住宅環境の中でも持ち運びやすく、収納しやすい木製の椅子を考えることからはじまりました。

対角線上にある前後の脚を貫材と呼ばれるつなぎ材で結び、1つのフレームをつくります。2つのフレームを交差させ、その上に背板と座面を取り付けることで椅子の構造が完成します。この独特の構造により、背板と座面が浮いているような軽やかな印象を与えています。実際には、貫材が交差する接合部には隅木を用いて補強し、2本の貫材をしっかりと固定しています。

フレームは地面に対して垂直ではなく少し内側に傾いており、脚裾が外側に広がることで、椅子が踏ん張っているような姿をしています。このフレームの傾きは、見た目だけでなく、座面と背板の取り付けやスタッキングにも影響を与えるため、何度も模型で確認を重ねました。

スタッキング時には、下の椅子の座面上に、上の椅子の座面裏にある貫材がピッタリと重なり合うように調整されています。貫材の形状を座面のカーブにあわせることで、見た目の美しさを保ちつつ、スタッキング時の安定感も高まりました。

その後、強度・製作加工・座り心地を検証するために実材での試作を繰り返し、座り心地の向上と積み重ねの安定性を追及しました。最終的には座面形状を修正し、商品化に至りました。


・テーブル(1998)
このテーブルはスタッキングチェアにあわせてゼロからデザインされたわけではなく、1972年デザインの伸長テーブルを元にデザインされています。伸長テーブルはダイニングチェア(現在の飛騨産業・柳チェアシリーズ現行品)にあわせてデザインされ、1997年に構造修正を中心にリデザインもされています。

このテーブルはオリジナルである伸長テーブルの形状を踏襲しつつ、天板には天童木工特有の縁材を使用しています。元々の天板の複雑な曲線を加工しやすいように簡便化し、縁材の四つの角Rを共通化することで、同じ型を流用することが可能になりました。また、天板裏の脚を取り付けるための裏板の製造にも縁材の型を流用し、製造しやすいようアップデートされています。

脚の取り付け位置は見た目の印象に大きく影響します。伸長テーブルと同様に、内側に脚を取り付けた方が見た目のバランスは良かったものの、使い勝手を考慮して大きく外側に移動しました。

販売開始当初は天板を3サイズ展開していましたが、現在は1サイズ(1600×900mm)のみとなっています。

(写真提供: 天童木工)

販売元 : 天童木工