清酒グラス

よく居酒屋などで見かけるこの清酒グラスは、日本酒のノベルティとしてデザインされた盃です。お燗も冷酒も飲めて、ステムがある(グラス容器下部分に、持つための脚がついている)、そういう「日本酒のグラスを作って欲しい」と日本酒造組合中央会より依頼されました。

金沢美術工芸大学で教鞭を執っていた柳と、同じく石川県金沢の酒造会社・福光屋の当時の社長・福光博氏との縁も後押しとなり、デザインが進められました。

日本酒用の盃を思わせる形に落とし込むまでに約2年が費やされました。最初にデザインしたグラス(中)は大変好評でしたが、日本酒はその温度によって味わいや香りが大きく変わってしまうことから、熱燗にはやや容量が大きいとの意見もあり、新たに小さいサイズをデザイン。一方、主に冷酒用に一回り大きいサイズも検討されましたが、こちらは開発途中で終わってしまいました。

それから約50年の月日を経て、当時実現されることのなかったステム部分に泡を入れた「泡入り」の試作品が改めて見直され、YANAGI DESIGN監修のもと『SAKE GLASS』として販売されています。職人が吹き竿に溶けたガラスを巻き付け、金型の中で回転させながら息を吹き込み成形する「廻し吹き」の技術でグラスを成形します。そして、まだグラスが柔らかいうちに脚部(ステム)に空気を吹き込み、繊細な形状の泡を一つ一つ丁寧につくっています。